泌尿器科解体新書

第20回 前立腺がんを知る(がんでも長寿)

 今日はメディアではあまり語られない前立腺がんのお話をします。

   前立腺がんは、他の臓器のがんに比べ進行が緩やかなものが多い、という特徴があります。もちろん早期に発見して手術や放射線治療で根治させるのが望ましい姿ですが、進行した状態で見つかったケースや古希を大きく超える年齢でがんと判明した場合には、ホルモン療法などの非根治的治療を受けることになります。

 ホルモン療法は、いわばがんを眠らせる治療で、ずっと眠らせることができれば根治させたも同然といえますが、数年以内に眠りから覚めることがあります。その場合には治療に様々な工夫をこらして継続し、少しでもがんの進行を遅らせるようにします。

 現代は高齢化の時代ですから高齢者に見つかる前立腺がんが非常に増えているのですが、医学の進歩によって多くのケースでは長期間がんをコントロールすること(根治させるかまたは眠らせることで)ができるようになっています。あまりメディアでは語られないことですが、前立腺がんの場合には、ほとんどの方が平均寿命近くまで自宅で普通の生活を送ることができるようになってきています。

 私どものクリニックの記録を調べてみますと、診断のための生検(細胞を確かめる検査)を行った患者さんは50歳代から70歳代を中心に76人おりました。そのうちがんであった方は42人で、全員が根治的治療(手術や放射線)あるいはホルモン治療を受けています。

 これらの患者さんのその後の経過を見てみますと、現在まで通院治療中の方々の現在平均年齢は73歳で、ほとんどの皆さんはお元気です。また患者さんの都合で今は当院に通院していない方々の最終通院時年齢は78歳でした。これらの方々も多くはやはりさらに長寿されたはずです。また亡くなったことを確認できた方の平均年齢は86歳でした。

 このように、前立腺がんの多くの方は治療しながら長寿されていることがわかると思います。高齢で前立腺がんであると分かっても、あわてずに落ち着いて治療計画を立てればよいということです。

 そうはいっても前立腺がんの中には、進行が比較的早く壮年期や初老期に亡くなる患者さんも少数ながらいるのは事実です。したがって若い人ほど(50歳を過ぎたら)きちんと検診を受けて、早期発見に努めるべきです。

泌尿器科診療と血液透析

泌尿器科診療では、特に前立腺肥大症の診断治療、女性尿失禁の診断と治療、投稿年の排尿障害の治療、血液検査、神経因性膀胱の治療、腎不全の治療、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌などの泌尿器科系癌の検診と治療コンサルタントなどに力を入れております。

血液透析は日中および夜間に行なっております。
すでに透析を導入されている患者さんでも、交通の便などから当院での透析治療を希望される方はご相談ください。