泌尿器科解体新書

第19回 水分の取りすぎによる頻尿

 前回は高齢者の〝夜間頻尿〟というテーマでお話ししました。高齢者の夜間頻尿には、①夜間多尿型②膀胱容量低下型③睡眠障害型④多飲多尿型などがあることを述べました。②は夜だけでなく昼間から頻尿になるものですが、①は夜だけが頻尿になるタイプで、いずれも高齢者には多い病態です。今日は④多飲多尿型についてお話したいと思います。

 多飲多尿型は、単に水分の摂取量が多いために主に昼間が頻尿になるものです。一日2㍑以上の尿が出るとそれだけで頻尿になります。〝血液のドロドロ防止〟のためと称してマスコミなどが盛んに飲水を勧めたことなどから、近年このタイプが増えてきています。マスコミだけでなく、医療関係者の多くも、水分をたくさん摂取することはそれだけ血液をサラサラにすることであると誤解していた、という実態があります。

 しかし最近になってようやく、飲水過多は決して〝血液ドロドロ防止〟にならないことが知られるようになってきました。健康雑誌やテレビも、かつて誤った報道をしたことに気づき、〝どんどん飲みましょう〟から〝脱水に注意しましょう〟に変わってきています。確かに脱水はよくありません。夏本番に向けてテレビでは、熱中症と脱水に注意しましょうと喚起しているのはもっともなことです。脱水になると、血漿量の減少、血液のドロドロ化を招来して、熱中症を悪化させたり、脳梗塞や心筋梗塞の危険度を増すと考えられるからです。

 しかし、脱水を是正する以上にたくさんの水を飲んでも、血液が普通以上にサラサラになることはありません。人の体には平衡を保つしくみがあるからです。余分にとった水分は、尿になるか体のむくみになるだけで、血液自体は一定以上にサラサラになることはないのです。一日の尿量は1㍑出ればよいのですが、脱水にならないように安全域を加えて1.5㍑ぐらいを目安にすればよいでしょう。それは飲水量で言うと、その人の体格や発汗量で違いますが、食事以外の飲料をおよそ1~1.5㍑とればよい位です。夏は汗をかくのでその分多く飲んでください。

 泌尿器科では必ず排尿の記録を取ってもらって一日尿量の計測をします。測ってみて初めて、3㍑も尿が出ていることが分かり本人もびっくりする、ということは診療でよくみられます。自分では〝飲みすぎ〟には気づきにくいものです。

泌尿器科診療と血液透析

泌尿器科診療では、特に前立腺肥大症の診断治療、女性尿失禁の診断と治療、投稿年の排尿障害の治療、血液検査、神経因性膀胱の治療、腎不全の治療、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌などの泌尿器科系癌の検診と治療コンサルタントなどに力を入れております。

血液透析は日中および夜間に行なっております。
すでに透析を導入されている患者さんでも、交通の便などから当院での透析治療を希望される方はご相談ください。