泌尿器科Q&A

Q.聞きなれない病名ですが、いったいどんな病気なのですか?

A.膀胱や尿道にかよっている神経が不調になって起こる排尿障害のことです。

 

人間のからだには血管があり全身に血液を供給していますが、同じようにからだ中にネットワークをはりめぐらせているのが'神経'です。手足が動くのも脳からの命令が神経を伝わって伝達されるからです。その神経は手足だけでなく、内臓にも張りめぐらされています。たとえば、食べ物が胃に入ると、神経が察知して胃腸の運動や分泌を活発にします。内臓の神経は手足の神経とは違い、意志とは無関係にいわば自動制御で働いているため、自律神経と呼ばれています。

 

自律神経は、膀胱や尿道にも存在し、とても大切な働きをしています。私たちは何も意識せずに生活していますが、尿が腎臓で作られて膀胱に少しずつ溜まっていくと、膀胱は自動的に内容量を感知して圧力を一定に保ったまま柔らかく膨らんでゆきます。やがてある一定量に達した時、膀胱は尿意という信号を脳に送りますが、その時点ではまだ膀胱の圧を上昇させず、柔らかさを保つように自動制御しています。そして、私たちがトイレに行き排尿せよという命令を下した時、はじめて膀胱は収縮をはじめるのです。

 

尿道も膀胱と連動して働いています。膀胱が柔らかく膨らんでいる時には適度に緊張して尿が漏れないようにし、排尿の時にはじめて緊張をゆるめて尿を通す仕組みになっています。つまり、膀胱と尿道は単なる袋や管ではなく、神経というコンピューターで高度な作業を無意識のうちにこなす、精巧なシステムなのです。

 

神経因性膀胱というのは、このような排尿の神経システムの‘どこかが狂った状態’を総称した病名なのです。

Q.どんな病気のときに神経因性膀胱になるのですか?

A.いろいろな病気やけがの時に神経因性膀胱は起こります。

 

たとえば、脊髄損傷。交通外傷などで背骨をいためると脊髄にキズがつき、下半身麻痺などの神経障害を起こすことがあります。この時多くの患者さんは神経因性膀胱になります。

 

脳血管障害(脳梗塞や脳出血)の時にも神経因性膀胱になります。梗塞や出血によって脳の血管の一部が遮断されると脳が障害されて、右か左の半身麻痺になることがあります。その時高率に神経因性膀胱を伴います。
 脳疾患の一つであるパーキンソン病でも神経因性膀胱になります。二分脊椎症という生まれつきの脊髄の奇形がありますが、その場合も神経因性膀胱が生じます。

また、子宮がんや直腸がんの根治手術では、膀胱や尿道の少し手前で神経が切断されてしまうことがあり、手術の後遺症として神経因性膀胱が起きる事があります。

その他、脊髄小脳変性症や多発性硬化症などの脳脊髄変性疾患・脊柱管狭窄症・糖尿病性神経障害など、実に様々な病気の際に神経因性膀胱になることがあります。

Q.神経因性膀胱になると、どのような症状があらわれるのですか?

A.排尿がしにくくなったり、逆に尿が近くなり漏れやすくなったりします。
 しかし、自覚症状に乏しい場合もあります。
 膀胱に無理がかかると時に腎臓障害をきたしてしまうこともあります。

Q.通院は必要でしょうか?

A.神経因性膀胱はよくある病気であるともいえますが、ちゃんと診断してちゃんと治療するには専門的な診察が必要です。

神経因性膀胱では、その患者さんの排尿障害の病態に合わせて、長期間、排尿を適切に管理する必要があります。この場合の‘管理’とは、お薬の服用、適切な排尿法の指導、定期検査などを含めた総合的なものです。神経因性膀胱では、年単位で膀胱機能が劣化し、場合によっては二次的な腎臓障害を起こすことがありますので、長期的な受診が必要です。

 

神経因性膀胱をお持ちの方で、きめ細かい診療を希望される方、自分の病気について詳しい説明を希望される方、ある程度障害の重い神経因性膀胱の患者さん、比較的特殊な疾患による神経因性膀胱の患者さんは、当クリニックにご相談ください。

 



泌尿器科診療と血液透析

泌尿器科診療では、特に前立腺肥大症の診断治療、女性尿失禁の診断と治療、投稿年の排尿障害の治療、血液検査、神経因性膀胱の治療、腎不全の治療、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌などの泌尿器科系癌の検診と治療コンサルタントなどに力を入れております。

血液透析は日中および夜間に行なっております。
すでに透析を導入されている患者さんでも、交通の便などから当院での透析治療を希望される方はご相談ください。